日本で初めて「デザイン」という言葉を冠した学校として創立された、桑沢デザイン研究所は今年で54周年を迎える。その所長に内田繁が就任した。過日その披露パーティーが、母校で行われた。
創立者桑沢洋子の理念は、デザインに対する既成概念を打ち破ることにあった。技術的な教育に偏ることなく、人間とデザインのつながりを重視したその理想は、現在の桑沢にも生き続けている。
かつて、旧校舎で学んでいた頃、「デザインとは、芸術か?」との問いに答える術も無く机に向かって思案していると、洋子先生の「走りながら考えなさい」の言葉に未だに突き動かされることがある。デザイナーは手を動かしながら考え、考えながら手を動かすこと。というバウハウスの思想の延長上にある桑沢流の教えだ。学生の頃はクラスメイトと良く飲みに行った。帰りに九段の実家に泊まりに内田も来て、靖国神社の大村益次郎の銅像を登ろうとして、警備の人に怒られた思い出も頭をよぎる。
パーティーは後輩の稲川淳二氏の司会で始まり、朝倉摂、中西元男両氏のご挨拶などに、例によって浅葉克己氏のパフォーマンス。今回は手旗信号だった。
既成概念にとらわれず、社会の中で機能するデザインを模索する。という本来の桑沢の教育理念をモットーに、デザイン教育の現場に、新しい風を吹き込み、世界に羽ばたくデザイナーを育てるべく、新たな改革に乗り出します。という内田繁所長に期待したい。